「最近、段差につまずくことが増えた」「立ち上がるときに手をつくようになった」。こうした変化は、年齢のせいだと受け止められがちです。けれど、これらは体からの分かりやすい合図でもあります。
高齢になってからの転倒は、骨折をきっかけに生活が大きく変わってしまうことがあります。歩けていた人が歩けなくなる。その入り口が、日常のちょっとしたつまずきだったというのは、決して珍しい話ではありません。
この記事では、転倒とフレイル(心身の活力が低下した状態)について整理し、前橋で暮らす方が「歩ける体」を保つために何ができるのかを考えます。予防を保証するものではなく、いま何を見ておけばよいのかを知るための内容です。
転倒というと脚の筋力を思い浮かべますが、実際にはいくつもの要素が重なって起きます。筋力、バランス感覚、視力、反応の速さ、そして薬の影響。どれかひとつが原因とは限りません。
たとえば、つま先が上がりにくくなると数センチの段差でつまずきます。バランスを崩したときに足を出す反応が遅れると、そのまま倒れてしまいます。つまり「転ばない体」とは、力が強い体ではなく、崩れたときに立て直せる体のことです。
だからこそ、対策も筋トレだけでは足りません。バランスを保つ練習、素早く足を出す練習など、複数の要素に触れておく必要があります。
もうひとつ見落とされやすいのが、住まいの環境です。実際の転倒は屋外より屋内で起きることが多いと言われています。玄関の段差、廊下に置かれた荷物、めくれたカーペット、夜間のトイレまでの暗がり。心当たりのある場所は、体を鍛えるより先に片づけたほうが早く効きます。
体を整えることと、環境を整えること。この両方がそろって、はじめて転びにくい生活になります。
フレイルとは、健康な状態と介護が必要な状態の間にある、心身の活力が低下した段階を指します。重要なのは、これが一方通行ではないという点です。適切に手を打てば、元の状態に戻る可能性があるとされています。
目安として、次のような変化が続いていないか振り返ってみてください。
いくつか当てはまったからといって慌てる必要はありません。ただ、気づいた時点で手を打てるかどうかで、その後の年月は変わってきます。
やっかいなのは、こうした変化がゆっくり進むことです。毎日少しずつなので、本人にはほとんど自覚がありません。久しぶりに会った家族に「歩くのが遅くなったね」と言われて、はじめて気づくということもよくあります。
だからこそ、外からの視点や記録が役に立ちます。年に一度、同じ項目を測っておくだけでも、変化の向きが見えるようになります。
膝が痛い、体力に自信がない。そうした理由で外出が減ると、筋肉はさらに落ちていきます。筋肉が落ちれば動きにくくなり、ますます出かけなくなる。この連鎖が、フレイルを進める大きな要因になります。
とくに前橋のような車社会では、意識しないと一日の歩数が極端に少なくなります。移動はすべて車、買い物も駐車場から店の入口まで数十歩。悪気なく暮らしているだけで、動く機会が失われていきます。
逆に言えば、生活の中に歩く場面を作り直すだけでも、状況は変えられます。特別な運動を始める前に、まずここを見直す価値があります。
連鎖はもうひとつ、食事の面でも起こります。動かないとお腹が空かず、食べる量が減る。とくにたんぱく質が不足すると筋肉は保ちにくくなり、また動けなくなる。高齢期の体重減少が問題視されるのは、この流れがあるからです。
若いころの「食べ過ぎに注意」という感覚のまま年を重ねると、いつのまにか足りない状態になっていることがあります。意図せず体重が落ちてきたら、それは順調ではなく、確認すべき変化だと考えてください。
加齢に伴う筋肉量の減少は、上半身より下半身のほうが進みやすいと言われています。太ももやお尻の筋肉は、立ち上がる、階段を上がる、転びそうになったときに踏みとどまるといった動作に直結します。
自宅でできる基本的な動きとしては、次のようなものがあります。痛みが出ない範囲で、無理のない回数から始めてください。
いずれも息を止めないことが大切です。数を増やすより、正しい姿勢でゆっくり行うほうが意味を持ちます。
回数の目安としては、最初は5回から10回を1セット、慣れてきたら2セットに増やす程度で十分です。毎日やろうと決めるより、「歯みがきのあと」「テレビの合間」など、既にある習慣にくっつけると忘れにくくなります。
そして、翌日に強い筋肉痛が残るようなら、それはやりすぎです。この年代では、疲れが抜けるまでの時間も長くなります。物足りないくらいで止めておくほうが、結果的に長く続きます。
力があっても、バランスを崩したときに立て直せなければ転倒します。そこで、日常の中でバランスに触れる時間を作っておきたいところです。
片脚立ちは代表的な方法ですが、必ず壁や手すりのそばで行ってください。何もない場所で試して転んでしまっては本末転倒です。目安としては、支えに手を添えたまま数秒から始め、慣れたら指先だけにしていく形が安全です。
また、歩く速さも大切な要素です。ゆっくり歩くことに慣れてしまうと、とっさの場面で足が出にくくなります。安全な場所で、少し速めに歩く時間を混ぜてみてください。
横断歩道は、ひとつの目安になります。青信号のうちに渡り切れるかどうかを意識してみると、自分の歩く速さが保たれているか実感できます。もし最近ぎりぎりだと感じているなら、それは体からの合図です。
速く歩く練習といっても、息が上がるまで急ぐ必要はありません。ふだんより少しだけ歩幅を広くする、腕を意識して振る。この程度の違いでも、体の使い方は変わります。慣れないうちは平らで人の少ない場所を選び、疲れたら無理をせず戻ってください。
自宅での運動は手軽ですが、続きにくいという弱点があります。誰も見ていないので、痛みが出ても気づかず無理をしてしまうこともあります。
その点、決まった曜日に出かける先があると、外出の機会そのものが確保されます。人と顔を合わせることは、フレイルの背景にある社会的なつながりの減少を防ぐという意味でも意味があります。
前橋市内でも、体操教室や運動できる施設がいくつもあります。場所を選ぶときは、次のような点を確認しておくと安心です。
最後の項目は見落とされがちですが、実際には大きな差になります。体調を崩して一か月休んだあと、気まずくて戻れなくなる。それが運動から離れるきっかけになってしまうことは少なくありません。
持病がある方、通院中の方は、運動を始める前に主治医へ相談してください。とくに次のような場合は必ず確認が必要です。
薬の種類によっては、ふらつきが出やすくなるものもあります。「最近ふらつく」と感じているなら、それを運動不足のせいと決めつけず、一度医師に伝えてみてください。
体力の変化は、感覚だけでは把握しにくいものです。半年前と比べてどうかと聞かれても、はっきり答えられる方は多くありません。だからこそ記録が役に立ちます。
手軽に見られる指標としては、次のようなものがあります。
体組成を測れる環境があれば、筋肉量の推移も確認できます。数値が保たれていることが分かるだけでも、続ける理由になります。
年齢を重ねると、体のことを誰に相談すればいいのか分かりにくくなります。痛みは整形外科、数値は内科、生活のことは地域包括支援センター。窓口が分かれていて、どこから話せばいいのか迷ってしまう。
そんなときは、まず日ごろ通っている医療機関に話してみるのが早道です。そこから必要な窓口につないでもらえることもあります。前橋市には地域包括支援センターが市内各所に置かれており、介護保険の手前の段階でも、暮らしの相談ができるようになっています。介護が必要になってから行く場所だと思われがちですが、そうではありません。
家族の立場から気になっている場合も同じです。本人に直接「衰えてきたのでは」と伝えるのは難しいものですが、第三者から健康づくりの話として持ちかけてもらえると、受け入れやすくなることがあります。
運動する場と、診てもらう場をつなげておく。この形ができていると、体調が変わったときに立ち返る場所ができます。歩ける体を保つというのは長い取り組みですから、ひとりで抱え込まない仕組みを先に作っておくことが、結果的にいちばんの近道になります。
本サイトの健康・運動に関する情報は、運営元の医療機関ローズタウン糖尿病内科の監修のもと作成しています。Medifit Labは医療機関ではなく、診察・診断・処方などの医療行為は医療機関(ローズタウン糖尿病内科/主治医)が行います。運動による変化には個人差があり、効果を保証するものではありません。特定の薬や治療の効果・安全性を示すものではありません。通院・治療中の方は、主治医の指示を優先してください。
転倒は、筋力だけでなくバランスや反応、視力、薬の影響など複数の要素が重なって起きます。したがって対策も、筋トレだけでは足りません。力を保つ動き、バランスに触れる動き、少し速く歩く時間を、生活の中に少しずつ混ぜていくことが現実的です。
フレイルは、気づいて手を打てば行き来しうる状態だとされています。体重が意図せず減っていないか、歩く速さが落ちていないか、外出の回数が減っていないか。こうした変化に早めに気づくことが出発点になります。
前橋のような車中心の生活圏では、意識しないと歩く機会が失われていきます。まずは生活の中に歩く場面を作り直すこと、そして持病のある方は主治医に相談してから始めること。運動する場と診てもらう場をつなげておけば、迷ったときに戻れる場所ができます。
痛みがある場合は、まず整形外科など医療機関でご相談ください。痛みの原因によって、避けたほうがよい動きが異なります。医師の指示を確認したうえで、痛みの出ない範囲の動きから始めるのが安全です。
年齢で線を引くものではありません。つまずきが増えた、立ち上がるときに手をつくようになったといった変化に気づいたときが、見直すきっかけになります。自覚がなくても、体力の測定を受けておくと現状を把握できます。
まずは一週間、歩数を記録して現状を知ることから始めてみてください。そのうえで、駐車場所を入口から離す、決まった曜日に出かける先を作るなど、生活の中に歩く場面を組み込む方法が取り組みやすいでしょう。